■ラジオ放送<ひろしまPステーション> 2004年(平成16年)7月22日

代表・陳富子、ヒロシマ・キャラバンをアピール


<ひろしまPステーション>は、140万人の広島経済・生活圏の中心部に位置する情報発信FMステーションです。毎週木曜日の9時から11時30分に放送され、パーソナリティは、李和枝(リ・ファジ)さん。わたしたちの活動に興味を示してくださった李和枝さんの招きで、ラジオというメディアでは初めて、わたしたちの活動と<ヒロシマ・キャラバン>のアピールをすることになりました。放送時間は11時から約10分。ラジオで伝えられた内容の趣旨は以下の通りです。



7月30日(金)、時間は、午後2時30分から広島市中区中町にあります広島クリスタルプラザ6階 ひろしま国際センター・交流ホールで、「アフガン難民の母と子に靴と夢のタネを届けたいキャンペーン」ファンタジー劇場キャラバン広島上映会が行われます。
今日は、この上映会の主催者でいらしゃいます、NPO法人Like Water Pressの陳富子さんにお越し頂いています。
NPO法人Like Water Pressは、どんな活動をしているのか詳しくお話下さい。


現在、わたしたちが中心に展開している活動は《ファンタジー劇場キャラバン》といいます。
ファンタジーというのは、みなさんもご存じの通り「空想の物語」のことです。そのファンタジーを映像化しまして、それを上映するわけですが、上映する劇場は決まっていません。恵まれない子どもたちがいるところならば、世界中どこでも、その映画をもって出かけていきます。まぁ、一種の移動映画館のようなものでして、それが「劇場キャラバン」と称している理由です。
具体的には映写機やスクリーン、スピーカーなどを車に積んで上映場所に向かい、そこに集まった子どもたちの前で、わたしたちのオリジナルのファンタジー映像を上映するのです。
これまで、主にアフガン難民の子どもたちのために、パキスタンとアフガニスタンの国境沿いにある難民キャンプの学校を中心に、約12箇所でキャラバンをしてきました。

難民の子どもたちを中心に展開しているのは何故ですか?

世界には、戦争や自然破壊などによって、逃げ出したり追い出されたりして、違う国に暮らさなければならない人たちがたくさんいます。いわゆる「難民」とよばれる人たちです。そういう人たちは、概ね特別に滞在を許可された「難民キャンプ」とよばれる場所に閉じこめられています。
たとえばアフガニスタンの場合、1979年の旧ソ連の侵攻をきっかけに25年間も続いた戦争によって、約300万人とも400人とも推定される人々が、隣国のパキスタンやイランへ避難していきました。
さらに2001年9月11日には、アメリカで同時多発テロ事件が起こりました。その後、アメリカ軍によるアフガニスタンへの空爆が行われ、アフガン難民の数は増えつづけました。そして今も多くの人々が石と砂だらけの荒野でテント暮らしを強いられているのです。
その難民キャンプでも、たくさんの子どもたちが生まれ育っています。
その子どもたちは、難民キャンプ以外の世界を知りません。その父親や母親自体が難民生活をしてきたこともあって、ほとんどの子どもたちが物語というものを聞かされたことがないのです。
ですから、その子どもたちが夢をみようとしても、難民キャンプの生活と、キャンプを取り囲む荒野の光景以外に夢の材料がないのです。そのような状態にいる子どもたちを、わたしたちは<あらかじめ奪われている子どもたち>と表現しています。
難民キャンプで生まれ、難民キャンプで育った子どもたちは皆、楽しく美しい夢をみることさえ、素敵な未来を描くことさえ、あらかじめ奪われているのです。
わたしたちの《ファンタジー劇場キャラバン》は、そういう<あらかじめ奪われた子どもたち>に夢をみるタネとなる、ファンタジーを見せて回る活動なのです。

活動を始めたキッカケは……?

活動を始めたキッカケについては、2つの側面から語らなければいけません。
一つはLike Water PressというNGOを立ち上げた側面から、もう一つは、《ファンタジー劇場キャラバン》というプロジェクトを始動させた側面からです。
ここでは《ファンタジー劇場キャラバン》を始めたキッカケを述べたいと思います。
先も話しに出ましたが、2001年の同時多発テロ事件、いわゆる<9.11>によって引き起こされた数々の出来事は、多くの人びとに、この世界が一体どこに向かっているのかを国籍やイデオロギーを越えて考え直させるきっかけとなったと思います。そして、わたしたちもまた、<9.11>を境に、それまでと同じ視点でこの世界を見ることができなくなっていました。
………何もしない善人は悪人である、
という言葉が、切実な実感としてわたしたちの中で響きはじめたのです。
そんななか、仲間の一人がパキスタンとアフガニスタンのアフガン難民キャンプへ行く機会を得ました。彼がそこで見たもの・感じたものを聞いているうちに、そこへ行って、そこで起こっていることを実際に自分の眼で見なければという意識にかられ、わたし自身も2002年12月に初めてアフガン難民キャンプを訪れました。
そして、そこで出会ったのが、難民キャンプに生まれ、難民キャンプで生きる子どもたちの<真摯な眼差し>だったのです。
その眼差しは、飢えていました。しかし、当の子どもたち自身が一体何に飢えているのかわからなくて、そのもどかしさを持てあますかのように、まっすぐわたしたちを凝視してくる、そんな強い強い眼差しなのでした。
………この子どもたちは、いったい何を求めているのだろう?
………この眼差しは、いったい何を見たいのだろう?
わたしたちのプロジェクトは、この自問から始まったといえます。 そして、その<真摯な眼差し>こそが、わたしたちに《ファンタジー劇場キャラバン》という一つの方向を与えてくれました。
とはいえ、最初は何からはじめてよいのかわからなかったため、しばらくは難民キャンプへ古着や文房具を送るなどの救援物資の真似事をしていました。当初から、わたしたちの集まりは極私的なサークルのようなものでして、元編集者や若いアーティストもいれば、引退者や子育ての経験を持つ主婦もいましたし、そこにパキスタンの若者たちも加わっていました。
その雑多な集団の特性を活かしながら、どうすれば子どもたちの<真摯な眼差し>に応えることができるかを考えていくなかで《ファンタジー劇場キャラバン》に辿り着き、2003年の夏にようやく第1回目のキャラバンを実現させたのでした。

ファンタジー作品は、どういう内容なのですか?

まず、わたしたちが難民の子どもたちに見せたいと考えたのは、自然を題材にしたファンタジーでした。単なる空想上の物語だけではなく、彼らが見たことのない、自然の営みや美しさなどを伝える実写を盛り込んで表現していきたいと思いました。
そのため、わたしたちは、5つのテーマに分けて物語を創りました。
動物、鳥、森、海、そして空の5つです。
それぞれをテーマにして、実際にわたしたちがみた夢をヒントに物語を創りました。子どもの頃にみた夢や、難民キャンプを訪問しているときにみた夢など、です。
その夢から生まれた物語をもとに、若い画家や映像関係者などが映像化していったのです。
現在、「空のはなし」はまだ作成中ですが、他の4つの物語は既に難民キャンプで上映され、たくさんのアフガン難民の子どもたちの眼を輝かせました。
また、そのうちの3つの物語は、今年初めに『ゆめからぽん』と題した絵本に仕上げ、自費出版もしています。絵本については朝日新聞さんにも取り上げられ、わずかながらですが、ご好評もいただいています。ラジオをお聞きのみなさんにも、ぜひ読んでいただきたいと思います。
ところで、7月30日の上映会でお見せするのは、このうちの2作品で、『シマウサギの冒険』と『海を見たことがない少年』です。

これまではパキスタン側にいるアフガン難民を対象に行われてきたそうですが、今後の予定は………?

わたしたちの活動も2年目を迎えますが、今後は他の地域にも活動場所を広げたいと考えており、その候補地として、イラン側のアフガン難民キャンプ、アフガニスタンの首都カブールの映画館、そして中国貴州省の山上にある洞窟村の小学校を挙げております。
そのなかでも早く実現したいと考えているのは、イラン国内にあるアフガン難民キャンプです。

それは、どうして……?

2カ月ほど前に、わたしたちはこんな新聞記事をみつけました。
イランにはアフガン難民の男性と結婚したイラン人女性が約4万人もいるのですが、イラン政府はその間に産まれた子どもたちにイラン国籍を認めていません。その上、今年の夏を期限とする<アフガン帰還政策>を進めているのです。
つまり、イラン人の母親は子どもと一緒にアフガンへ帰還するか、子どもと離れてイランに留まるかの選択を迫られている、という内容でした。
以前からイラン側のアフガン難民キャンプでの巡演は予定していましたが、彼らの状況を知ったとき、一刻も早くイラン国内の難民キャンプを訪れ、わたしたちのファンタジー映像を母親と子どもたちに届けたいと考えたのです。

今回は上映会と同時に「靴」を贈る計画だとのことですが?

はい、そうです。
これまでの難民キャンプ訪問を通じて、わたしたちはあることに気づかされました。
それは、世界には「靴を履くことが当り前となっている」子どもと、「裸足であることを余儀なくされている」子どもとがいるという事実です。
砂と石だけの荒野、炎天下の夏と凍りつく冬という季節しかない地で、裸足で暮らす過酷さは「靴を履くことが当り前となっている」わたしたちには想像もつきません。とりわけ、どの社会においても弱者である女性や子どもたちに、その過酷さはおしつけられています。
わたしたちは、そういう母と子に、自由に歩ける時代への祈りを込めて、《ファンタジー劇場キャラバン》とともに、<靴>を届けたいと、このキャンペーンを思い立ちました。
また、たくさんの救援物資の中で手間のかかる靴の支援は後回しになりがちです。一人一人の足のサイズや形にあったものを調達しなければならないからです。できるだけ早く、できるだけ多くの支援を優先していくと、非効率的な物資はこぼれていってしまうのが現状です。わたしたちは、このように後回しにされがちなもの、こぼれがちなものを拾っていきたいと思いました。
当面の目標として靴3000足を調達する募金を集めるために、今年いっぱいをメドに各地で上映会を展開していきたいと考えています。そのスタート地が広島というわけです。
靴は日本ではなく現地イランでの調達となります。日本から運ぶとなると、莫大な配送料や関税がかかるため、その分だけ子どもたちに配給される靴の数も少なくなってしまうからです。そこで、わたしたちは現地での靴選びから関わり、実際に難民の子どもたち一人一人に手渡していく方針です。また帰省後は、それらの過程を録画したビデオ映像を見ていただきながら、支援者の方々にキャンペーンの結果報告をするつもりです。

この活動を多くの方に知って頂きたい、また ご理解、ご協力頂きたいと言う事で「アフガン難民の母と子に靴と夢のタネを届けたいキャンペーン」ファンタジー劇場キャラバン広島上映会が行われます。広島からスタートだと聞いていますが………?

そうです。それには理由があります。
アフガン難民キャンプを訪れるなかで、わたしたちが日本からやってきたNGOだと聞くと、多くの人から受ける質問があります。それは………、

………日本は、かつてアメリカからヒロシマとナガサキに原爆を落とされた。
      その悲惨な経験をもつ国でありながら、なぜ、アメリカのアフガニスタン攻撃を支援したり、
      アメリカに同調してイラクへ軍隊(自衛隊)を派遣したりするのか?

というものです。
この質問に対して、わたしたちは、日本人の多くが平和を願い、自衛隊の派遣や戦争には反対なのだと説得力をもって応えることができませんでした。
その一方で、原爆という悲劇を体験したヒロシマから発信される「平和」のメッセージは、日本国内や世界において大きな意味をもつのだと実感しました。おそらく広島県民のみなさんが考えていらっしゃる以上に大きな意義をもつのです。
そこで、わたしたちは、ヒロシマのみなさんにお願いしたいのです。ヒロシマのみなさんから、アフガン難民の子どもたちに、<平和>と<愛>のメッセージを発信してもらいたいと。ヒロシマのみなさんから届けられる靴を、<平和>と<愛>のメッセージのシンボルとして、彼らを勇気づけ、希望をもたせてあげてほしいのです。
そのメッセージは、自衛隊の多国籍軍への参加など、日本から発せられる他のどんな救済手段よりも、世界の人々の心に触れるものと信じております。そこで、この上映キャンペーンを広島から展開することにしました。

最後に、ラジオをお聞きの皆さんにメッセージをお願します。

この《ファンタジー劇場キャラバン》の活動を通して、わたしたちは、ただ物資を運ぶ「配達人」ではなく、子どもたちが夢を見るために必要な素材や記憶を届ける「創り手」でありたいと願っています。
………子供たちのために行動を起こすことで、
      なんであれ「失敗だった」と決して言ってはいけない。
      それは未来を殺すことだ。
この言葉はそのまま、わたしたちのプロジェクトの理念となっています。
広島から始まる、靴を届けるための支援金キャンペーンも、この理念のもとに展開しています。
そこで必要なのは、みなさんからのご支援です。靴3000足を集めるための支援金はもちろんですが、わたしたちと共にキャンペーン活動に参加して下さる仲間も募っております。
7月30日の上映会はそのお願いの場所でもあります。
ひとりでも多くのみなさんのご来場を、心からお待ちしております。
ありがとうございました。



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