4年前にバグダッドを取材したとき、支局の入ったホテル一帯が、夜間に何度かロケット弾で攻撃された。そのつど跳ね起きた。耳の奥に轟音(ごうおん)がへばりついて、ドアがバタンと閉まる音にも、どきっとしたものだ▼米軍の空爆を取材した知人は、帰国後も後遺症が尾をひいた。干した布団をたたく音に身構えたりした。彼によれば、空爆の下、ある家族はみんなで大声で歌っていたそうだ。子供の気が爆音に向かないようにして、心の傷を防ぐためだった▼音ばかりではない。戦火は五感すべてを通して、子供の柔らかい心をえぐる。東京で開かれている「カブールの幽霊」という展示会を見て、そう思った。



内戦の続くアフガニスタンの子らが「幽霊」を描いた絵約350点が並んでいる▼6年前、ユニセフがアフガンの子らに、「最も怖い」ことと「最も嫌な」ことを聞いた。「爆撃と爆発の音」や「銃を持つ男」を抜いて、「幽霊」というのが一番多かった。それを知った東京のNPOが、幽霊を描いてもらった▼黒こげ、血まみれ、飛び出す内臓や骨……。酸鼻と、子供らしい感性や色彩とが入り交じる絵は、見るに切ない心の投影だ。子らをさいなむ幽霊とは、「対テロ戦争の最前線」にされる祖国の荒廃にほかならない▼その対テロ作戦への給油活動が、来月にも再開される。しかし、あまたの「幽霊」を見るにつけ、対米支援ではなくアフガン支援の論議こそが、より深まるべきだと思いは募る。腕力頼みの荒療治だけでは、幽霊の跋扈(ばっこ)はやまないだろう。



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